テレンス・マリック監督の長編デビュー作。1970年代のアメリカを舞台に、若い男女が逃避行を続けるロードムービーです。派手なアクションがある映画ではなく、もっとミニマルで内面的な部分に焦点を当てた映画です。人によっては物足りなさを感じるかもしれませんが、私にはほかに類を見ないほどの素敵な映画体験ができました。
主人公が突発的な行動をとることもいくつかありましたが、それも不思議と受け入れながら観ることができました。この映画を一言で表すなら夢を見ているような映画です。
夢のような浮遊感の正体
やっていることは連続殺人というシリアスな内容ですが、映画全体を通して不思議と現実感がありません。ホリーの淡々としたナレーション、圧倒的に美しい映像、子供っぽくおだやかな音楽。これらが合わさって独特の浮遊感を生み出しています。
特に夕方の砂漠で黄昏るシーンは、現実に存在するのか疑うほどの美しさがありました。
またクライマックス以外では二人に対する脅威がほとんどなく、物事がすべてうまくいくような都合のいい展開が続きます。この都合のよさもまた夢っぽさを強めています。監督が派手なアクションを撮りたいわけではないことがよくわかります。
音楽の選択センス
音楽のチョイスも印象的です。歯医者さんで流れるような、場を和ませるおだやかな音楽が連続殺人鬼である二人の日常に流れています。このギャップが絶妙にマッチしていて、映画全体の夢のような雰囲気をさらに強めています。
二人の子供っぽさ
主人公のキットとホリーは精神的に未熟で、世界の主人公が自分たちだと錯覚しているように見えます。ごみ処理の仕事をしている男性と、学校では地味でおとなしい女の子という設定も、完全に成熟した愛ではない二人の未熟さを感じさせます。殺人への罪悪感がほとんど感じられないのも、そういう内面の表れだと思います。共感するのは難しいですが、その非現実的な感覚がこの映画の魅力でもあります。
夢から現実へ
しかしクライマックスになり、いざ追われる身になると、ホリーが主人公の世界に急速に冷め切ってしまい降参してしまいます。最終的に主人公は一人で逃げますがあっさり降参してしまいます。このあっけなさが、二人を一気に夢から現実に引き戻してる感じがあって最高でした。
まとめ
地獄の逃避行は夢を見るような体験を楽しむ映画だと思っています。美しい映像と淡々としたナレーション、そして絶妙な音楽の選択が合わさって、見ている間ずっと不思議な夢の中にいるような感覚を与えてくれます。本当に素晴らしい映画です。