デヴィッド・リンチの作品はどれも世界観が強烈で個性的ですが、私にとって一番リンチらしいと感じる作品がこの「ブルーベルベット」です。私が映画に求めている大好きな要素がふんだんに詰め込まれた映画です。笑ってしまうくらい変なシーンが多い映画ですが、それと同時に知性も感じさせます。
どうして奇妙に感じる?
この映画はなぜ奇妙に感じるのか、私なりに考えた要因は「ギャップ」です。白いフェンス、学生とその両親、青々とした芝生、女性歌手、のどかな田舎町。それらが平和を象徴しています。しかしこの映画では、その正反対の奇妙さを暴力、ギャング、虫、性などで表現し、平和との落差を生み出しています。
このギャップをうまく活用している映画はたまに見かけます。でもブルーベルベットは、リンチにしかできない演出が合わさって、この映画を特別なものにしています。そしてその演出は過剰すぎない絶妙なバランスを保っているように思います。このバランス感覚が二流にとどまらない評価を得ている理由でしょう。個人的に印象に残った演出を二つ紹介します。
かゆいところに手が届かない不快感
映画の冒頭で主人公の父親が庭で水やりをしていたところ突然倒れるシーンがあります。ホースが植物に絡まって思うようにいかない様子、倒れこむときに着ている真っ白なシャツが泥だらけになってしまう様子、苦しそうにしているときに助けてくれる人はおらず、赤ん坊やホースから出る水に夢中になった犬だけがいる空間。このかゆいところに手が届かないような不快感をリンチはうまく感じさせています。
異質さの演出
映画のラストで、頭を打たれた黄色い服の男性が立っています。銃で撃たれた人は倒れるというのが映画の典型です。しかし立っていることによって、この映画の異質な雰囲気がより際立ちます。
まとめ
ブルーベルベットは間違いなく人を選ぶ映画だと思います。変態なシーンが多いので敬遠する人もたくさんいるでしょう。それでも評価が高い理由は、その奇妙さの裏にある知性と、日常と非日常のギャップの演出、理性的な側面をもったリンチだからこそ成り立ったのだと思います。リンチの一見安っぽく見えるシュールな演出が面白いと感じれる人は、深く楽しめる映画だと思います。
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